このデザインは私がノムラにやってきて
はじめてデザインしたランドセルの中の1つです。
デザインを入れたランドセルと言うものが、特別なブランドとしてではなく、世に広まりだした2008年。ノムラもお客様のニーズに応えようとデザインランドセルの企画がはじまります。現在もお願いしている工場様からの当時の指定はステッチデザインであることでした。
その頃はオーダーランドセルも同時に進行する予定となっており、何パターンかの候補を出しました。花、ハート、星など。お子様が好きそうなものを考え並べました。
デザインするときに私が心がけていたのはただ1つ。
シンプルであること。
デザインを拘るということは、個性や特徴を生むということです。女の子らしくをより強調しようとすれば、キラキラしたストーンやお姫様のようなデザインで、どんどんかわいくできます。当時 子供用のファッションバッグをデザインしていた私には、何をすれば少女達が喜ぶ、トキメクものができるのかは勉強していて、分かっていたことでした。かわいいの中でも少女達には個性があります。キュート、フェミニン、ラブリーと呼び方を変えるように、彼女たちの選ぶ色、形、モチーフは少しづつ違います。
それが 個性。
少女の戦士たちでもそうですよね、かわいかったり、大人っぽかったり、ボーイッシュだったり、とても個性的。小さくても彼女たちは拘りのある女性なのです。
でもその多くは一過性のものです。ファッションとは流れていくもの。成長と共に好きな物は変化します。敏感で変化を好み、お洋服や髪形を変える彼女たち。そんな中でも背負い続けるのがランドセルです。
6年間は長いです。だから・・・
変わっていく外見や心を邪魔しないものを作りたかった。
だから、シンプルに。
それでも1年生。
ちゃんとかわいくしたかった。
だから女の子の好きなハートとリボンをくっつけて。
普通のランドセルより少しかわいい。そのくらいで。
もっともっとデザインがこだわったランドセルが周りに増え主流になったら、もうやめようか?となるかなと思っていましたが愛され続いています。嬉しいことです。
そして、私の思うこのランドセルへの
お母様からの ”一番” と感じる誉め言葉
このくらいがちょうどいい。
パッと聞くと誉め言葉っぽくないですが、お母様が手に取った時、派手さを感じず、成長を思い浮かべても邪魔にならなそうと感じたから出る言葉。『ちょうどいい。』そう思っていただけると本当に嬉しいです。
ちょうどいいを信じて8年目。
機能やサイズは年々変化する中、デザインを変えず貫くということは
本当は怖いんです。
少し前にランドセルがとても華美な物ばかりの年がありました。時代遅れになってしまったのではと不安になります。変わらないことって本当に怖いんです。でもその年も変わることなく、このデザインは売れていました。ランドセルはファッションとして流れるものとは違う所にいると言うことを再認識させてくれた年でした。
そしてデザインを信じて変えないでよかったと思わせるのはこの言葉
『お姉ちゃんと同じのを買うの。』
下のお子様がおられると「〇年後に来ます。」と言って帰られる方が多いのですが、それを聞くと、今日は満足していただけたのだな。と嬉しくなります。そして数年後”その時”が来たのだなと感じさせてくれるのが『お姉ちゃんと同じ』という言葉。大好きなお姉ちゃんが選んでいた時は、自分も欲しいけどまだ買ってもらえない。やっと買ってもらえる!と言う気持ちが伝わるほど、入ってきてランドセルの棚へ一直線で進む女の子。
続けていてよかった瞬間です。
長くなりましたので、今日はこのへんで。
ではまた(・ω・)ノ